駆け抜けた少女【完】
どうやら斉藤に異変が起こっているのは確かなようで、芹沢らも騒ぎに気づいた。
「斉藤君、どうしかね?」
と、芹沢が尋ねるが、斉藤はうずくまったまま何も言葉を発しない。
脂汗が滲む額、カタカタと震えた体に尋常ではないと察した。
「どうやら、腹痛のようだ」
島田が言った。
眉を寄せた芹沢に斉藤はやっとの思いで、口を開く。
「だ、大事はない……」
そんな風には見えず、芹沢は「岸に船をつけろ」と船旅の終わりを告げた。
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