駆け抜けた少女【完】

どうやら斉藤に異変が起こっているのは確かなようで、芹沢らも騒ぎに気づいた。


「斉藤君、どうしかね?」

と、芹沢が尋ねるが、斉藤はうずくまったまま何も言葉を発しない。


脂汗が滲む額、カタカタと震えた体に尋常ではないと察した。


「どうやら、腹痛のようだ」


島田が言った。


眉を寄せた芹沢に斉藤はやっとの思いで、口を開く。


「だ、大事はない……」


そんな風には見えず、芹沢は「岸に船をつけろ」と船旅の終わりを告げた。



.
< 158 / 592 >

この作品をシェア

pagetop