駆け抜けた少女【完】
結局、沖田は矢央と共に部屋に残ることにした。
酒が好きではなかったし、さっき感じた違和感が、まだ残っていたからだ。
斉藤は薬がきいていて眠りついているが、その傍で未だ心配そうに顔を覗き込んでいる矢央を、窓際に持たれながら見つめていた。
刀を畳に置き、胸を押さえる。
このギュッと締め付けられる感覚は何だというのか。
苦しいような……
切ないような……
わかんないなぁ―……
参ったと、苦笑いする。
黄金色の高く結い上げた髪が、矢央が動くと同時に肩からサラリと流れ落ちる。
野口が見とれていた。
思わず触れたくなる気持ちがわかるような気もしたが、その美しい髪よりも沖田が触れたいと症状に駆られたのは、また別のものだった。
「沖田さん、お茶でも飲みますか?」
ふと話しかけられ、沖田は視線を少し上げる。
沖田の隣で、お茶をいれはじめた矢央の白く小さな手を見ている。
柔らかそうな、手触りのよさそうな白く透き通る肌だった。
沖田も色白だったが、黄が混じった白。
矢央の白さは、まるで雪。
汚れを知らない、白さに引き寄せられるように、沖田はその手に触れていた。
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