駆け抜けた少女【完】
「沖田さん、お茶こぼしちゃうじゃないですかぁ」
突然の行動に多少驚きはしたものの、矢央はクスクスと笑っていた。
たが、沖田は笑み一つ浮かべていなかった。
ーーーーーー沖田さん?
様子がいつもと違ってみえたのは、沖田の真剣な表情のせいだろうか。
「沖田さん、手……あの…」
普段からかわれるだけなので、真剣な表情で大きな手に包まれると、どう対応すればいいかわからなくなる。
目を泳がせる矢央に、引き寄せられるように沖田の顔が近づいて行った――――
「お―……おき…」
下からゆっくり迫ってくる美顔に、五月蝿い程心臓が波打つ。
―――――ガタッ!!
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