駆け抜けた少女【完】
『あなたにお願いしたのに……彼らを守ってと』
現代からこの時代にタイムスリップした時から、何度か聞いた言葉だ。
そして、夢の中でみた暗闇に浮かぶ光の筋の中の少女。
「これ、夢のまんま……」
『夢ではないわ。 此処は、私とあなたを繋ぐ異空間。
私はあなたに、彼らの未来を救ってほしいと思ってお願いしたのよ』
「未来を……救って?」
後の新選組となる彼らが辿る未来がどんなに悲しいものになるか、歴史に疎い矢央はわからない。
だから、何を救えばいいかも予想すらつかない。
『お願い、彼らを救って』
少女は、そればかりを繰り返した。
その声は、あまりにも悲しい。
気づけば矢央自身が涙を流し、言いようのない想いを抱えていた。
『お願い…お願い……』
「あ…なたは……誰?」
『私はあなた、あなたは私』
「………私は、あなた?」
繰り返した時、また気の遠くなりそうな闇に包まれた。
そして、矢央の意識が戻ったとき、そこは見慣れた京の屯所の布団の中だった。
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