駆け抜けた少女【完】
藤堂の体が安堵感からクラッと傾き、頭がぽてっと布団の上に乗った。
「へ? 藤堂さん…っ…」
様子を伺おうと頭を少し上げただけで、ズキッと頭が痛む。
「う〜」と、あっさり見る事を断念した矢央の耳に「ねみ〜」と、弱々しい声がした。
矢央が屯所に帰って来てから一日、ずっと藤堂が寝ずに面倒をみていたので睡魔が襲ったのだ。
瞼がショボショボする。
―――ポン、ポン……
「――――ん〜?」
「藤堂さん、寝るなら此処でどぉぞ」
起き上がった藤堂が寝ぼけ眼で見たのは、矢央が自分の寝ている布団を叩いているとこだ。
藤堂は、おろおろとする。
頭をかきながら、それはつまり一つの布団に男女が……
想像して、うっ!と口元を隠した。
布団の一部を明け渡すために隅に寄っていた矢央には、藤堂の顔が真っ赤なことに気づかない。
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