駆け抜けた少女【完】
「おまん、迷子か!?」
「はっ! さっきのおじさん!」
何故か橋の手摺に立っている、結い紐おじさん。
出店前で別れたはずなのに、何故此処に(?)と、矢央は怪しむどころか――………
「助かったぁぁぁぁ!!」
飛びついていた。
そして、
「――なっ!?」
「あらら?」
飛びついた拍子に、男の体は後ろに傾き、抱きついた矢央事、川に…………落ちる。
―――――バシャンッ!!
「ぶはっ!」
「ハハハハッ! こりゃ、じゃじゃ馬娘ぜよ! アハハハ!」
「……ごめんなさい」
矢央のせいで川にダイブし、矢央の下敷きになりずぶ濡れだと言うのに、男は怒るどころか大笑い。
これが土方や永倉さなら、今日の夕餉は抜きだったなと溜息を吐き出した。
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