駆け抜けた少女【完】
タイムスリップしたのは三ヶ月前。
間者として疑われたが、この三ヶ月で信用してもらえたと思ってた。
だけど、それは思い違いだったのか………
そう思うと、悲しくて悔しかった。
「矢央、暫くは―……おいっ!」
土方の言葉を聞く前に、矢央は部屋を飛び出していた。
あの場にはいられなかった。
泣いてしまいそうだったから。
根っから人を疑う事を知らない矢央だからこそ、疑われるというのが耐えられないのかもしれない。
痛い……胸が、押しつぶされるようだ。
矢央が出て行ってしまった後、土方は空をかいた手をパタリと下ろすと、大きく息を吐く。
「土方さん、あなたはどうして素直な言い方が出来ないんですかねぇ?」
長い髪を撫でながら、沖田は土方を見ずに言う。
「ああ? なんのことだ?」
「矢央さんを危険な目に合わせたくないのだと、何故そう言ってあげられないのです?」
ぐっと、口ごもる土方。
その隣では、近藤も肩を竦めている。
「いや、今回は俺もまずい言い方をしてしまったようだ。 歳が悪いわけではないよ、総司」
「当たり前です。 近藤さんも、同罪です」
「うっ…」
「………」
近藤と土方は、顔を見合わせると参ったと開け放たれたままの庭へと目を向けた。
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