駆け抜けた少女【完】

山南には、この時代の読み書きを教わった。

矢央の知らない時代背景も教わった。


熱心に勉学に励む矢央を、山南はいつも父のように暖かく見守り誉めてくれる。


それが、嬉しくて、また勉学に精を出す。



意地悪な沖田とは、今でもたまに喧嘩っぼくなったりするが、根が優しい沖田に、矢央はこの時代の遊び方を教えてもらった。

壬生寺で近所の子供達と遊ぶ時、いつも誘ってくれる沖田。



いつも笑っている原田の隣には、悪戯好きの藤堂がいて。


そして、そこに永倉が加われば三馬鹿トリオだ。


矢央の夜更かしに、いつも付き合ってくれる藤堂とは、今一番気の知れた友人だと矢央は思う。


原田には、体が鈍らないようにと稽古相手になってもらったり、原田の腹を枕にし昼寝を楽しむ時もあった。


兄のように時に優しく時に厳しく接してくる永倉、たまに反抗してしまうが、そんな厳しく優しくの永倉を、矢央は尊敬していた。



他にも、芹沢や山崎、斉藤に島田に井上と、


いつしか、矢央にはみんなが大切で大好きな存在へと変化しつつある。


このまま未来には戻れないかもしれない。

そう思う気持ちもあったが、今では別の感情も芽生え初めていた。


ずっとこのままでいたい。


笑い合い、時には揉めてもかまわないから、このまま楽しく可笑しく刺激しあいながら、みんなとの時間を過ごしたい。


そんな想いが、ガタガタと音を立て崩れていくようだった。



.
< 201 / 592 >

この作品をシェア

pagetop