駆け抜けた少女【完】

山崎は以前、土方から極秘に調査を言いつけられていた。


土方とて、妹のように可愛がったお華と似た矢央を疑いたくはない。

だが立場が立場、いくら年若い少女といえど自分達の弱きところに漬け込んだ間者かと疑うのも無理はなく。


信じてやりたいからこそ、山崎に矢央の素性を調べさせた。


せやけど、何処にもこのガキがおったちゅー話は聞かんかったんや。 つまりこいつは白。


結果、山崎は土方に矢央は白だと伝えていた。


疑り深い土方自身も調べてみたが、やはり間島矢央に関するものは一切ないとわかり、間者という疑いは晴れたのである。


「私は、守れって言われたの」

「……何をや?」


矢央は、薄暗い床へと目を向けた。


「誰かは、わからないけど…みんなを守ってって。 よくわからないけど、誰かが私をこの時代に連れて来た」

「ほな、そいつがお前に役目を与えてるわけか?」

「多分……。 でも、守れって言われたって、何をしたらいいかわかんない」


薄々気づいている、きっとあの少女はお華じゃないかと。

だけど、一つ引っかかることがあった。


私は、あなた…あなたは、私って、どういう意味?

私は…私なのに……。



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