駆け抜けた少女【完】
ほわりと胸に染みた山崎の言葉。
嬉しかった。
今まであまり関わらなかった山崎だが、初めてちゃんと話すことが出来た。
「伝えなきゃ、伝わらない…か」
山崎が閉めていった扉を、しっかりと見つめ流れた涙痕をゴシゴシと袖で拭うと、バシッと顔を手で叩く。
「ありがとう、山崎さん」
まだ、怖い。
だけど、山崎は信じると言ってくれたから。
矢央は、震える手をギュッと握り締めると何度か頷いた。
「大丈夫……大丈夫だから…」
取っ手に触れ、ソッーと扉を開けた。
まん丸な満月が、矢央を出迎えていた。
ザッと、一歩を踏み出した矢央の姿を、屯所の屋根の上から山崎が見て微笑んでいる。
満月を見上げ、結い上げていた髪をバサッと下ろし、髪を風に靡かせる。
「俺も、ガキんちょには弱いみたいや」
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