駆け抜けた少女【完】

震えて、我慢する矢央を山南は優しい眼で見つめていた。


ゴクンっと、喉を鳴らし、矢央は口を開いた。


「…私を見て…ほしいぃ……」



そう伝えるのが精一杯だった。

我慢の糸が切れた矢央は、ワーッと子供のように泣き喚く。



だが、それだけで十分だ。と、山崎は「頑張ったな」と、呟き夜空に消えていった。



私を見てほしい。

お華とたぶらせるのではなく、矢央自身を見て接してほしい。


「我慢していたんだね。 寂しかったんだろうに…もう、何も我慢することはないよ」

「うっ……ううーっ…」


一人で抱えていた寂しさを、山南が抱きしめてくれたことで、スーッと抜けていくようだった。


山南の着物に皺がいく、矢央はすがりつき泣き喚く。


一人は嫌だと、小さな体が訴えていた。



「土方君、少しは彼女の気持ちを知らないと、囲うだけでは彼女を守っていることにはならないよ」



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