駆け抜けた少女【完】
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文久三年、六月二十九日、浪士組を偽り金策を行っていた植村長兵衛を斬殺。
その首を、その場に晒した。
それにより浪士組は、京で更に恐れられる存在となった。
巡察中、浅葱色の隊服を見つけると町人達は震え上がった。
それでも、また大坂で浪士組を偽る者が現れ捕縛に足を運ばせた。
「藤堂さん、いつ帰ってくるかなぁ」
大坂に出張に向かったのは、藤堂率いる八番隊だ。
一番の遊び相手である藤堂がいないのは、矢央にとってはつまらない。
「沖田さんも、巡察だし。 暇だな〜」
「だったら、芹沢さんに茶でも持って行け」
「うーん、それが……」
遊び相手がほとんど出払ってしまった屯所に、唯一残る土方の部屋に矢央はいた。
毎度のことながら、暇としか言わない矢央。
芹沢の小姓のくせに、最近はほとんど前川邸にいるので
出戻りか、なんて笑われた。
「どうかしたか?」
「最近、芹沢さん女の人とばっかいるんですよ。 だから、用があれば呼ぶとか言われちゃって」
「本当に出戻りだな。 で、女って?」
土方は、矢央の入れたお茶を飲み興味なさげに問う。
女か。 そういや、最近は割と大人しい。
「綺麗な人でしたよ。 お梅さんって言うそうです」
「お梅ねぇ―……」
晴れ渡る青空を見上げ、土方は何を思うのか。
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