駆け抜けた少女【完】

八月七日、祇園北林にて大坂相撲と京都相撲との興行は行われ、浪士組は警護に追われた。


反対していた芹沢がいないおかげか、小さないざこざはあったものの賑やかな興行となった。


「芹沢さん、部屋に籠もってばかりいると体中カビだらけになっちゃいますよ?」



興行が始まってから、忙しなく働く近藤達と違い、芹沢はずっと自室に籠もりっぱなしだ。


お梅も忙しいのか、この五日ばかり訪ねて来ておらず、矢央が芹沢の世話をしているのだが。

「ねぇ、散歩でも行きませんか? 天気も良いですよ!」


ずっと寝たきりの芹沢の世話は退屈で仕方なかった。

本心では、相撲興行の見物に行きたいと思っていたが、ちょっとでも口に出せば機嫌をさらに損ねてしまう。


ならばと、遠回しで誘ってみるが


「行かぬ」


の、一言しか返って来なかった。


どうしたものかと考えているうちに、大坂力士達は京都相撲との和解興行を終え、当初の目的であった浪士組への手打ち興行として、十二日壬生村へとやってきたのである。



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