駆け抜けた少女【完】
壬生浪士組局長近藤勇の部屋には、近藤以外にも少女を助けた永倉、原田、藤堂。
そして試衛館時代を共にした山南敬助、井上源三郎が三人を出迎える。
土方、山南は近藤を補佐する目的に副長を勤め、後の者はその副長を補佐する副長助勤という役割を持っていた。
つまり後の新選組幹部達を前にしているが、特別歴史に詳しいわけじゃなかった少女はあまりに緊張した様子はない。
というか、全く緊張の欠片も無かった。
廊下に立ったままの少女に先に座った沖田が「こちらへどうぞ」と、座るように指示を出す。
小さく頭を下げると少女は畳の上に正座して、先程からジッとこちらを見て来くる男達を睨みつけた。
「なんなんですか、さっきから。 人の顔をジロジロ見て」
「うをっ? 声まで似てらぁ…こりゃ驚いた…」
声を出した原田を少女はギッと睨みつけると、ガバッと立ち上がりズカズカと原田の前に移動した。
皆がその光景に一瞬茫然としているなか、少女は原田の前に座り大きく息を吸い込んだ。