駆け抜けた少女【完】
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「お相撲さん方は、さぞかし沢山お食べになるんでしょうね」
「総司、お前さっきから何回同じこといやぁ気がすむんだ?」
「あれ、そうですか?」
毎日毎日、相撲ばかりを見せられては飽きると訴える。
が、土方は仕事だと言う。
わかってますけど、暇ですねぇ……。
対して事件も起きないので、散歩でもしようかと立ち上がりかけた沖田の視界に、芹沢の腕を引く矢央の姿が見えた。
「あらら、やっぱり来ちゃいましたか」
「あ? ゲッ…あんにゃろ、余計な奴を連れて来やがって」
沖田の背中越しに、土方も二人を確認に眉を寄せた。
嫌そうな土方と違い、沖田は楽しそうに微笑んでいる。
「芹沢さぁん! 矢央さぁん! こちらですよぉ!!」
「あ、沖田さんだ! ほら、芹沢さんあっちに行きますよっ」
矢央も沖田を確認し、渋々着いてきた芹沢を引っ張る力を強めた。
芹沢は観念したのか、眉間に皺を寄せながらも矢央に促されながら沖田らの待つ場所に向かう。
「矢央ちゃん、何か久しぶりだね?」
芹沢を座らせた後、矢央も腰を下ろすと、そこに藤堂が寄って来た。
矢央は振り返って、笑顔を浮かべる。
「えっと、六日ぶりです!」
「寂しかったよぉ!」
「私もですぅ!」
人が大勢いるのに、恥ずかしげもなく抱き合う二人だったが、もう見慣れた二人のじゃれつきに呆れながらも怒る者はいない。
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