駆け抜けた少女【完】
長い睫が頬に影を落とした。
少女は、スーッと顔を逸らし光を見上げる。
その姿が、あまりにも儚げで美しく、まるで天使のように思えた。
しかし、やはりその表情は冷たい。
『消さなくては……彼らを、守らないと…』
消す? 消すって一体なにを?
少女の言う"彼ら"とは、きっと近藤達の事。
では、邪魔者とは?
『邪魔者はいらないの。 だってそうでしょう? 彼らにとって、邪魔なものはあってはならないでしょう?』
「……っ……」
何も言えなかった。
少女に見つめられると、金縛りにあったかのように体が動かない。
体は冷え、恐怖を感じているように小刻みに震えていた。
『いらないわ……。 私には、彼らさえいればいいの。 だからね、わかるわよね? だって、あなただもの……わかるわよね?』
わかんないよ!
声に出せない変わりに、矢央は青ざめた顔を左右に振った。
弱々しいその顔に、少女は手を伸ばし頬に触れた。
冷たい。
白い手は、一切の温度を持っていなかった。
『もうすぐよ。 もうすぐ……もうすぐよ』
目が回る。
また、意識が飛ぶのだとわかった瞬間、
確かに、少女は笑っていた―――――――