駆け抜けた少女【完】
パチッと目を開き、キョロキョロと落ち着き無く辺りを見回した。
まだ暗い。
傍からは、寝息もする。
どうやらまだ夜更けだと知る。
「―――ふぅ……」
髪をかきあげながら身を起こした。
お華さんは、なんであんなこと………。
最後に矢央が感じたのは、彼女の悲しみや辛さじゃなかった。
あれは、明らかに……
――――――殺意だ。
「喉…かわいたなぁ…」
悪夢に魘された矢央の体は水分を要求していた。
起こさないようにソッと布団から出て、静かに障子戸を開けた。
月が、うっすらと雲に隠れている。
時たま覗く月は赤く、不気味さを漂わせていた。
なんだか、胸騒ぎがする…。
邪魔者って、なんなんだろ? お華さんは、一体なにをするつもりなの?
考えても答えに結びつくものは見いだせない。
何だか怖かった。
この夢は、まるで悪夢の始まりを予言しているようで……
そして、自分の夢なのに、自分ではどうにも出来ない歯がゆさに、ギュッと胸が苦しくなる。
「どうか、みんなが無事に過ごせますように―――」
矢央は、井戸の前で空に向かい神に願う。
皆の、平和を。
その姿を、柱の影から誰かに見られているとも気づかずに―――――
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