駆け抜けた少女【完】

プンプンと怒る矢央を宥めていた永倉だったが、突如悪巧みを企てニヤリと笑う。


「矢央」と、低い声で囁き呼び寄せると、白い耳を露わにさせ唇を寄せた。



「房事ってわかるか?」


房事と聞いた矢央は聞き慣れない言葉に首を傾げると、永倉を見上げた。


「お前の時代では、房事って言わねえらしい。 なら……」


ゴニョゴニョと、また耳元で囁かれた矢央は次第に顔を赤らめていく。



「どうやら、これは意味がわかるらしいな」

「男女の…ま、ままま交わりって……その……」

「お前がさっき見てきたやつのことだな」



房事とは、寝室での男女の交わりをいう。

それを理解した矢央は、自分で言うのは照れないのに人から言われると照れるという、変わった行動をとる。


「んでだ、生娘ってのは、その房事をしたことのねぇまっさらな女のことだ」

「……まっさら…」


永倉の言葉を理解しながら、繰り返し呟く矢央を腕を組みながら面白そうに見下ろし

永倉は、ニヤリと笑みを浮かべた。


「つまり、お前……」


そのまま身を屈めた永倉は、矢央の目を見つめながら言った。

「まだ、男を知らねぇんだな?」

「―――――なっ!?」




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