駆け抜けた少女【完】

「なにしてんの……」


一点だけ明るい大和屋は、火に焼かれ悪目立ちする。


大きな瞳に映るのは、焼かれ続ける大和屋の前に立つ芹沢の大きな背中。



「芹沢はんの仕業や」

「芹沢さんのっ? なんで、どうして、こんな酷いこと…」


民家の隙間に身を潜めながら、矢央はお梅を見た。


動揺する自分とは違い、全く慌てた様子もなくその様子を見物するお梅。


「どうして、止めないんですか!?」


芹沢の横暴な振る舞いは、矢央も聞かされてきた。

だが、今までは誰かがそれを止めに入ったのに今回に限っては皆が見物人とかしている。


(これじゃあ、芹沢さんが悪者になっちゃうじゃんか)


ただでさえ評判が悪い芹沢が、こんな事をしたら、さすがに罰せられるのではないかと心配する。


が、お梅は違った。



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