駆け抜けた少女【完】




夜もふけ始めた頃、矢央はお梅と共に湯屋から屯所へと帰って来た。


八木邸の前で、お梅と付き添っていた平隊士と別れを告げ前川邸の門を潜る。



「もう、なんでこの家にはお風呂がないんだろう。 こんなに暑いのに、毎日お風呂に入れないとか最悪じゃん……」


週に一、二回程しか湯屋には行けない環境に腹を立てながら玄関から部屋に向かっていると。


―――ユラ〜…


角を曲がる白い袖が見えて立ち止まった。


一瞬しか見えなかったが、


「沖田……さん?」


首を捻り、部屋とは違う方向へ消えた人物を訝しむ。


あれ? もういないや……。
いったい、何処に行っちゃったんだろう?


気になりつつも、まあいいかと部屋へと続く廊下を歩き部屋の前につくと、様子がおかしなことに気づく。



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