駆け抜けた少女【完】


部屋の中が真っ暗だ。


この時間なら、行灯を灯すか障子を開けっ放しにして月の明かりを楽しんでいるはずなのに。


今日の非番は永倉さんでも井上さんでもないよね?


二人がいれば、寝るまでの束の間を読書に費やすはずなので、尚更明かりがないのはおかしいことになる。


何だかおかしい。


何かあって、みんな出動したのかもと思いながら障子に手をかけて開けた。



すると―――――……



「ワッ!!」

と、真っ白な何かが目の前に飛び込んできた。


ビクッと体を揺らした矢央は、口をパカンと開けたまま立ち尽くす。


「……………」

「……クッ…クックックッ…アハハハッ! 矢央ちゃん、固まっちゃった!!」


部屋の隅からお腹を抱えながら藤堂が現れた。

そして、永倉、井上も苦笑いしながら入り口に集まってくる。


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