駆け抜けた少女【完】
――――ガタガタガタ…
閉めていた障子がスーッと静かに開いていく。
「なんだ?」
と、永倉が上体を起こした。
障子の隙間から吹いた風で、部屋の中央にあった火がフッと揺れて消える。
ビクンッ!
と、体を震わせる矢央。
そこにいる皆、息を呑んだ。
「ふふふふ」
含み笑いで、白い袖を口元に当て、長い髪を前へと流した線の細い女子が、月の明かりを浴びて青白く輝いていた。
綺麗ともとれるが、異様な雰囲気にそれを見た矢央は、
「で、出たあああああああっ!」
「っうわ!?」
キーンと響く矢央の雄叫びは、深夜の屯所中に聞こえたという。
そして、泣く矢央に抱きつかれた藤堂は突然のことに顔を真っ赤にして固まっていた。
「や、やっぱり幽霊はいたんだっ! うーっ! 南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏………」
訳もわからず、ただひたすらお経を唱える矢央を見て、井上だけはクスッと全てお見通しとばかりに微笑んでいる。
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