駆け抜けた少女【完】
井上を中心に、右側では泣き喚く矢央と、その矢央に抱き付かれニヤけ顔で呆然とする藤堂。
左側には、壁にズリ寄って抱き合う永倉と原田。
左右を確認した井上は、前にいる幽霊を見てスッと目を細めると。
「総司君、少々悪ふざけが過ぎているよ」
「…あら、源さんにはわかっちゃいましたか?」
正体をズバリ見破られた沖田は、前に流していた髪をスッと後ろにかきあげて、素顔を晒した。
ニコッと笑い首を傾げる姿は、本当に女子のように妖艶に映る。
「……ばっ、総司このやろっ! 驚かせんじゃねぇよ! 玉が縮こまったじゃねぇかっ!」
「原田さん、いけませんねぇ。
女子の前でははしたない言動は謹んで下さいよ?」
妖しくキラッと光る流し目。
原田は、ゾクゾクと悪寒を感じた。
幽霊よか総司の方がよっぽどこえぇじゃねぇかよ……。
「原田さん達がいけないんですよ、こんな楽しげな場に私を誘ってくれないんですもん」
先程まで沖田は土方の部屋に呼ばれていたため、この怪談話に誘われなかった。
用事を済ませ戻ってみれば、何やら楽しげなことをやっているではないかと、ぷっとむくれたのはつい先程のこと。
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