駆け抜けた少女【完】


薄暗い廊下に、月夜に照らされた顔半分が浮かぶ。


その顔こそ、まさに鬼。


角と牙があれば完璧な、鬼副長土方の登場である。



「で、でたあああああっ!」


ひーっと声を上げ、その場に永倉が尻餅をついて土方を見上げていると、当の本人は永倉を跨って障子戸に手を当て中を覗き込んだ。


しかも、また顔半分だけ。



「「「でたあああああっ!」」」


パタリと、矢央、藤堂、原田も倒れていく。


それに苦笑いする井上と、除け者にされた沖田だけはフッと不気味に笑っていた。



土方さん、わかっててやってるなーこりゃ。、


少しだけ、気分が晴れた沖田だった。



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