駆け抜けた少女【完】
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たまたま通りかかっただけだと言った土方は、静かにしろとだけ注意して部屋に戻っていった。
布団を敷く係になった矢央は、縁側に座っている沖田に尋ねる。
「ねぇ、沖田さん」
「はい、なんですか?」
「さっき裏庭の方に行くのを見かけたんですけど、何しに行ってたんですか?」
湯屋から戻って来た時、玄関先で見かけたことを思い出したのだが、それを尋ねると沖田は、はて(?)と空を見上げた。
暫く考えた後、また矢央に顔を戻し
「私、夕刻からずっと土方さんの部屋にいましたけど?」
「――――――え?」
最後の布団を敷き終え、ピタッと動き止めた矢央。
ちょっと待って、ずっと土方さんの部屋にいた?
じゃあ、あの人影は?
沖田のように線が細く、沖田がよく着ている白い着流しが目について。
だから、あれは沖田だと思い込んでいた。
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