駆け抜けた少女【完】
原田、藤堂が矢央に泣かされている時同じ、別の場所では沖田が薄雲に隠れた月を眺めている。
柱に身を持たれさせ、カコンと下駄を鳴らした。
「総司、部屋に行かねぇのか?」
「……ん? 永倉さんこそ、どうされたんですか?」
袖に腕を通し歩いて来る永倉を、にこっと微笑みを浮かべ見た沖田。
永倉は沖田のいる庭には降りず、廊下から同じように月を見上げるとポツリと洩らした。
「今日は赤い月か。お華の命日、その晩の月と全く同じってのはよ……」
「彼女は……本当に未来からやって来たのでしょうか?」
「……と、言うと?」
月から視線を外した沖田は、さらさらと揺れる庭の桜を見つめた。
「いえね、わかってるんですよ。 彼女が、お華ではないことなんて…この私が一番知っているはずなのに……」
グッと拳を握りしめた沖田。
未来でもあの世からでもいい。
彼女が、お華が戻ってくるならば。
永倉はポンポンと沖田の頭を軽く叩くと「冷えねぇうちに戻ってこいよ」と言って、先に部屋へと帰って行った。
その広い背中を見つめ、沖田は何を思うのかーーーー