駆け抜けた少女【完】
「あなたと私は切れない間柄。
言ったでしょう、"あなたは私、私はあなた"と」
そうなのだ。
その台詞があったから、矢央はもしかしたらお華の生まれ変わりかと思った。
だが、本当の意味は、二人は一心同体だと言っているのだとわかり、矢央は慌てて山崎の背中に身を隠していた。
お華さんに体を奪われたんだっ……。
そして、私の体を使って芹沢さんを追い込んだっ!
ガタガタと震えが止まらなくなる。
お華が怖い、制御出来ない自分自身が怖いと思った。
「間島……?」
山崎には、二人が何を話しているのかさっぱりだ。
目の前の少女の正体も、芹沢のことも二人にしかわからない会話。
「もう逃げられないわよ。
あなたが、私の代わりをしてくれないなら……私がするしかない」
「待ってよっ! まだ、何かするつもりっ?」
震える手で山崎の腕を握り、必死の形相でお華に問う。
しかし、お華は返事の変わりに、また攻撃を再開した。
バザーっと、刃の束が二人目掛け伸びて来る。
「…クソッ…たれっ!!」
あまりの速さに、さすがの山崎も避けるのが精一杯のようで、ギリギリのとこで、矢央事、地に身を投げ出した。
雨が降りしきる庭に体を滑らせた二人に、お華は無表情で体を向ける。
また、しかけてくる……
「化けもんは、さっさとあの世に去ねっ!」
二撃目が来る瞬間、山崎は不利な体勢にも関わらす、懐から小さな刀を取り出し素早く飛ばした。
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