駆け抜けた少女【完】


「救護隊をつくり、矢央と数名の隊士を配属させることにした」


――――バンッ!


永倉が床を叩いた。

乾いた音が部屋に響き、予想通りの展開に近藤は息を吐いた。


永倉は、鋭く土方を射抜き低い声で尋ねる。


「そりゃつまり、矢央を壬生浪士組に入隊させるっつーわけかい?」


永倉の威圧感は相当なもの。


剣の腕前も気迫も土方より増す永倉だ。


しかし、土方は悪ガキが悪戯を思いついたようにニヤリと笑ってみせる。


「そうだ」

「寝ぼけてんじゃねぇぞ。
あいつは女だ、戦に巻き込むっつーのかい」

「救護隊だ、戦場のど真ん中には置くつもりはない。
足手纏いがいたって、こっちが大変だからな。
しかし、あいつの力は使える…だから入隊させる」


もう一度、永倉が口を開きかけようとした。


「もう一つ」という、土方の言葉に呑み込んでしまった。



「あいつは、今も、そしてこれからも時代の動きに戸惑いながら生きていくはずだ。
あいつが本当にお華と関わっていようが、それがあいつが此処に必ずしも止まる理由にはならねぇ……」


「つまり、矢央君を此処に留めておくために局中法度を利用するわけですか。 土方君」


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