駆け抜けた少女【完】


山南は気が高ぶると眼鏡を弄る癖がある。

今も意味もなく、眼鏡をグイッと持ち上げていた。


土方は、スッと永倉から山南へと視線を流した。



やはり永倉と山南さんは反対派になったな。


土方とて、既に予想済みであった。


「隊を脱する者、切腹申し付ける候……。
矢央さんが入隊し、もし隊を抜ければ切腹。 それが、彼女を繋ぎ止める手立て…ですか」


沖田は、あまり関心がない。


関心がないというより、沖田も山崎同様に土方の決めたことに最初から反論する気がないのだ。


「あいつが、倒幕派の連中と関わると厄介だからな。
利用できるもんは、俺はなんであろうが利用する。
これについて、反論は受け入れる気はない。 決定だ。 後日、改めて細かく決めていく。 以上、もう戻っていい」


一気に言って、土方は文机に体を向けてしまう。


本当に反論を聞き入れない態勢をとっていた。



「俺は、認めねぇ」

「………………」


永倉は無言の返しを受け、舌打ちをして部屋を出て行った。


その後を戸惑いながら追いかけた藤堂と原田。

井上は溜め息をつきながらも、渋々といった様子で部屋を後にし、近藤も部屋を出る山南がその後を追った。


「それでは俺も失礼します」

「ああ。 山崎、引き続き矢央を見張ってくれ」

「はっ」


山崎も部屋を後にした。


残ったのは、沖田だけだ。


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