駆け抜けた少女【完】
「近藤さん、本当にその道しかないのでしょうか?」
芹沢の暗殺を、どうにか防げないものかと口には直接出さない山南だが、顔は嫌だと語っている。
「山南さん、あんたのその優しさは良いことかもしれねぇが。
それがいつか、あんた自身の首を絞めかねねぇぞ」
先程の祓いせのように土方は投げやりに言った。
そして、山南は眉を下げ口を塞いでしまう。
どうしようもないのだ。
こればかりは、松平容保からの直々なのだから。
「まずは、片腕を潰すぜ」
「それはつまり……」
此処にきてようやく沖田が口を開く。
土方の頭の中には、既に案が出来上がっていた。
芹沢だけではなく、この際だ芹沢一派を廃除しようと企ている。
まずは、頭がキレる芹沢の片腕である新見を潰し、新見を失い更に立場を弱くさせたととこで、一気に芹沢を叩く計らいだ。
「総司、新見はお前に任せた。
手筈は話した通りにしろ」
土方がそう言うと、沖田は小さく頷き腰を上げる。
そしてそのまま部屋を出て行った。
「歳よ…本当に、これで良いと思うか。 俺達は、仲間を…」
「近藤さん、弱々しいことは言わねぇでくれ。 あんたは、どっしり構えてくれてりゃいい。
汚れ役は、俺達がする」
流れるような黒髪を靡かせ、土方は近藤に見向きもせず部屋を後にした。
後に残った山南は、握り拳をひたすら見つめていた近藤に言った。
「私は時々、土方君は本当に鬼ではないかと思ってしまう。
首を絞めかねないのは、彼も同じだ……」
「…………」
一風の風が、京に秋を呼ぶ。
そんな昼下がりは、静かに過ぎていった――――
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