駆け抜けた少女【完】
*
時同じくして、矢央は土方の部屋に来ていた。
矢央を部屋に通し、土方は障子をピシャリと閉め外部との接触をたつ。
土方が床に座るのを、ドキドキしながら見つめる矢央は勘違いしていた。
土方がやけに真面目な表情のせいで、きっと何かお叱りを受けるんだと思っている。
わ、私…なんかしたっけ?
思い当たる節がありすぎたのか、矢央は笑みをひきつらせて頭を振った。
「矢央、お前…仕事がほしいと思わねぇか?」
「いやいやいや! 私決して……って、仕事? へ?」
とりあえず誤魔化す作戦に出た矢央は、コテンと首を傾げている。
仕事をしたいと思わないか、と聞かれたのだ。
「芹沢さんは、最近は益々部屋に籠もっちまって小姓の仕事はしてねぇだろ。
掃除や洗濯や賄いは、順番にやる奴らが決まっているし女中もいるからな」
俯いた矢央は、グッと着物を握り締めていた。
.