駆け抜けた少女【完】




時同じくして、矢央は土方の部屋に来ていた。


矢央を部屋に通し、土方は障子をピシャリと閉め外部との接触をたつ。


土方が床に座るのを、ドキドキしながら見つめる矢央は勘違いしていた。


土方がやけに真面目な表情のせいで、きっと何かお叱りを受けるんだと思っている。



わ、私…なんかしたっけ?


思い当たる節がありすぎたのか、矢央は笑みをひきつらせて頭を振った。



「矢央、お前…仕事がほしいと思わねぇか?」

「いやいやいや! 私決して……って、仕事? へ?」


とりあえず誤魔化す作戦に出た矢央は、コテンと首を傾げている。


仕事をしたいと思わないか、と聞かれたのだ。


「芹沢さんは、最近は益々部屋に籠もっちまって小姓の仕事はしてねぇだろ。
掃除や洗濯や賄いは、順番にやる奴らが決まっているし女中もいるからな」


俯いた矢央は、グッと着物を握り締めていた。


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