駆け抜けた少女【完】
土方から問われている。
今まで問題が起きては面倒だからと、何もかも自重するように言われて生活してきた。
だが、仕事をするとなると行動を起こさなきゃならないし、信用が無ければ、あの疑り深い土方が仕事を与えようとはしないだろう。
ガバッと、顔を上げた矢央の目は一切迷いがなかった。
「やりたいです」
必要としてもらえるなら、自分でも何か役に立てるなら仕事がしたい。
ただ毎日、やることを探しながら悶々と悩みと格闘するのとおさらばしたかったのもある。
真っ直ぐ透き通った眼差しを向けられている土方は、にっと口角を上げた。
「ならば、仕事を与える。
新しく設置することにした救護隊に間島矢央を配属させよう」
「救護隊……」
これから自分に与えられる役職を復唱する。
「簡単に説明すれば、任務に就いて負傷した奴らを介護してくれたらいい。 直接、戦に関わることは極めて少ないが、無いとも言い切れないぞ」
それは、土方が矢央に最後に与えた唯一の選択肢だった。
一番隊から十番隊までは、直接体を張る任務に就く。
そして、それは時に命させ殺めてしまうし逆もあり得る。
が、土方が新たに作った救護隊は最も死から遠い小姓の仕事の次に安全な役職だ。
しかし、戦場にも着いて行かなければならない場合だってある。
その場合は、矢央にも死を覚悟してもらわなければならいないのだ。
「今のまま小姓ならば、お前が戦場に行くことはない」
土方としては、矢央を利用する企みがある。
だが、心の片隅では巻き込みたくないという矛盾も存在していた。
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