駆け抜けた少女【完】

矢央が壬生浪士組に特殊枠として入隊が決まり、役職もついたとあって矢央の一人での外出許可も与えられた。


土方と別れた矢央は、具体的にこれからどうしたらいいかを山崎に問う。



「救護隊は、怪我人が出たら治療と世話をするのが仕事やから、まず怪我人がでんなら仕事はない」

「そっか」



浮かない顔をした矢央。


山崎は隣を歩く小さな少女に尋ねる。


「やりがいがないと思うか?」

「いいえ。 どちらかといえば、怪我人が出たら仕事っていうなら、怪我人が出ないでほしいと思って」


誰かが傷つくとこなど、できるなら見たくはない。


けれど、壬生浪士組には到底無理な話だ。


「これから、怪我人は更に増えるんは間違いあらへん。 そのうち休みないくらい忙しいなるやろから、今のうちゆっくりしときぃ」



山崎と矢央の部屋の別れ道につき、山崎は矢央に小さな笑みを浮かべた。


いつも無に近い表情しか見せない山崎なりの気遣いが現れているのを、矢央はわかっていた。


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