駆け抜けた少女【完】
真っ直ぐ永倉を見やる目には力が籠もっていた。
一切譲る気はないと。
一切引く気もないと。
「何からだ」
「確証がないので、今は言いたくない……」
言いたくないと言うが、その言葉だけで何となくわかった。
矢央は、お華から皆を守ろうとしていると。
お華が大切だと言う彼らを傷つけるとは思わないけど、いつあの危険な力が何かの弾みで彼らに向くとも限らない。
矢央にとっても、彼らは大切な存在なのだ。
傷ついてほしくない。
失いたくない。
だから、出来るだけ彼らの傍にいたいと思っての入隊だった。
「永倉さん……」
「良いよ。 好きにしな」
「え…ちょっ……」
永倉は急に話を中断させてしまう。
その顔は、もう矢央ではなく空を見上げてしまっていた。
……見放された?
そんな思いが、不安となって矢央を襲う。
その不安を脱ぎ払いたくて、もう一度永倉の名を呼ぼうとしたのだが―――
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