駆け抜けた少女【完】
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「気を悪くしないでください」
沖田と矢央は、今は誰もいない道場の入り口に腰掛けていた。
沖田が隠していた和菓子を美味しそうに食べていた矢央は、そう言われてシュンと俯く。
「……私は、心配かけるか怒らせてばかりですよね」
この時代にも随分慣れた。
失敗も少なくなった。
それでも、元々違う価値観があるせいか小さないざこざは絶え間なく続き
矢央は、自分が足手まといにしかなっていないと感じている。
「仕方のない事ですよ。
あなたは女子なのです。 私達が、あなたを怒るのも心配するのも、あなたに傷ついてほしくないからです」
天を仰ぐ沖田。
やはり沖田を包む雰囲気というものは、とても穏やかで居心地が良い。
「永倉さんは特に強いかな?
面倒見の良い人だから、あなたが可愛くてしょうがないんだと思います」
「ええっ! それ絶対違いますよー…」
胡散臭さそうに沖田を見た。
その間抜け面に、思わず吹き出してしまう沖田。
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