駆け抜けた少女【完】
信じろという方が無理があるとわかっているからこそ、矢央の言葉には刺はない。
それに気づいている男だったが、やはり若干疑ってしまうのだ。
「今の京はよ、倒幕派の連中が騒動を起こしまくって手をやいてる状態だ。
そんな中で俺達は壬生浪士組として治安維持のため市中警護をしてる……だからよ、誰もが怪しい奴を疑ってかかっちまうのは仕方ねぇこと……」
歴史に疎い矢央にも何となく彼らの置かれている立場を知る。
今の京には倒幕派のテロ行為が盛んに行われ、治安を守るはずの京都所司代、京都町奉行なども手がつけられない状態にあった。
そのため会津藩の藩主・松平容保は京の治安維持とテロ対策のため新たに、市中警護役に"壬生浪士組"が置いたとされている。
そんな最中に突如怪しさ満点の女が現れれば、いくらまだ少女といえど疑うのは致し方ない出来事だった。
「だか、俺達は……。信じてぇと思ってるよ、お前のこと」