駆け抜けた少女【完】
第十三話*葛藤
*
「おい、起きんか」
「――――んっ…」
いつの間にか眠っていた矢央を、山崎は遠慮なく蹴り起こす。
「痛い……」
「んな邪魔なとこで寝とる己が悪い」
邪魔な場所とは沖田と話ていた道場の入り口で、そういえば沖田は(?)と、辺りを捜してみる。
―――が、何処を捜しても沖田の姿はなく、代わりに山崎がいるので矢央は首を傾げた。
「沖田さんは?」
「……ああ、あん人なら先程出掛けて行きよったわ」
出掛けて行った?
沖田が出掛けることは可笑しなことではないが、山崎の間が気になった。
一瞬だが、眉が動いたような………
.