駆け抜けた少女【完】
「オウッ! 平助、帰ったか!」
「左之さ〜ん、やっとだよぉ? やっとゆっくりできるぅぅ」
廊下から現れた原田は、隊服を着込んでいて出動前に藤堂に会いにきたらしい。
久しぶりに原田を見た藤堂はヘラッと笑い、そんな藤堂の肩をバシッと叩く原田。
「なぁに、んなだらしねぇ声出してやがんだ! 男は気合いだ! 気合い!」
「…ゴホッ! いや、気合いだけじゃどうにもならない時だってあるからね」
「ああ? んなことねぇぜ! おりゃ今まで気合いだけで生きてきた! ガハハハッ!」
そりゃあ、あんたが何も考えてない筋肉バカだからだよ……。
腰に手を当て、仰け反って笑い続ける原田を見て呆れ気味の藤堂。
ツンツンと下から袖を引っ張られた藤堂は、何事かと下を向いた。
「威張ることじゃないよね?」
「まあね」
ハハハと笑い、藤堂は原田の背中を押した。
「どうでもいいけど、早く行かないと隊士達が待ってるんじゃないの?」
「おお! そうだった! んじゃあ、平助、夕刻までのんびりしてろよ」
「はいはい。 行ってらっしゃい」
ヒラヒラと手を振る藤堂の後ろで、いそいそと布団を畳む矢央。
押し入れに布団をしまったところで、ハッと思い立つ。
「藤堂さん、もしかしてお休みになります?」
「ん?」
手を首の後ろに当て、凝った筋肉を解しながら振り返る。
藤堂は先程、出先から帰ってきたので、これから休息するつもりだったのではと思い、ならば藤堂の布団を出すくらいはしようと思ったのだ。
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