駆け抜けた少女【完】




予想以上の土砂降り。

だが暗殺には好都合だろう。

足跡や物音を消してくれるのだから。



「皮肉なもんだ。 仏様も黙認してくれるとさ」


黒装束に身を包んだ土方達は、土方が開けておいた入口付近の草陰に身を潜める。


人数は四人。


土方、沖田、山南、原田。


山南は浮かない表情で、最後まで殺さない方法はないのかと訴えていた。


「んなもん、今更だろうが」

と、一言で土方に言いくるめられてしまったが。


原田は今か今かと飛び出しかねない、沖田は雨がしたる庭をただ見つめていた。



「行くぞ。 山南さんと原田は、奥の部屋だ。 俺と総司は…」

「芹沢さんですか」

「ああ…。 さっさと済ませるぜ」

「さっさと済ませてくれる相手じゃないと思いますよー」

「…………」


絡んでくる沖田を無視し、四人は土砂降りの中、八木邸へと突入した。


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