駆け抜けた少女【完】
キンッ カンッ と、闇に音を立てる。
沖田が突きを繰り出すと、それを芹沢が受け流す。
そこへ背後から土方が刀を振り落とすが、身を屈め刀を横へと流し距離を保つ。
拉致があかない。
が、二人を相手にして致命傷を与えられないのは、さすがといったところだ。
静かだった部屋に三人の攻防戦の音が響き、隣の部屋で寝ている八木家の人達に見られないか気がかりだ。
逆に騒ぎを聞き、逃げ出してくれていたらいいがと沖田の集中が一瞬だが逸れた
――――刹那……
「ぅわっ……」
芹沢が沖田に襲いかかったきた。
ヒュンッと素早い険の流れに、さすがの沖田も避けるので精一杯だった。
避ける時、平山の寝ていた布団に足をとられてしまったのも誤算だ。
「総司っっ!」
土方が沖田の襟首を掴み引っ張ったおかげで、直接刃を受けることは避けられた。
髪の二、三本がハラリと舞う。
「バカッ! 油断するんじゃねぇっ」
「アハハッ。 すみません」
まるっきり反省してない。
土方は、わざとらしい溜め息つく。
「次は、私の番ですよ?」
負けるわけにはいかないのです。 と、沖田の目が語っている。
が、芹沢とて簡単にヤラれてやる気も毛頭ない。
また刀同士がぶつかり合った。
――――ギンッッ
ギリギリと沖田は芹沢に体重をかけていく。
息がかかる程に距離が近づいていた。
「惜しい。 惜しいぞ、沖田よっ」
ん(?)と、眉を寄せた沖田に、芹沢は意味ありげに笑ってみせる。
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