駆け抜けた少女【完】
縁側へと出た芹沢を追いかける。
芹沢は隣の部屋の障子戸を足で蹴破り中へと入る。
ゴロゴロゴロッと、先ほどから雷雨が激しくなっていた。
「おりゃよ……沖田、お前に一目置いてたんだぜ。 だが、お前は剣術馬鹿すぎて他が見えちゃいねぇ」
「……さっきから、何が言いたいのですか?」
「本当に気づいてねぇのか…」
その時だった、芹沢は堪えきれないと笑いだす。
アハハハハッ! と、雷に負けないくらいの大笑いに唖然となる沖田。
そんな沖田の背後に土方が立った。
「頭がイカちまったのか」
「まだ酔っ払ってるのでしょうか?」
「どちらにせよ騒ぎがデカくなる。 いい加減蹴りをつけるぞ」
「………はい」
今は兎に角、芹沢を早々に始末してしまいたい。
平山をヤる以外、全て計画外すぎだ。
たらふく酒を飲ませたのに、芹沢の動きは軽やかで、計画も知られているなんて。
早く事を済ませてしまうに限る。
「俺を……やるならやってみな!!」
かかってこいと、挑発する芹沢が何故か急に腹立たしく感じた。
その双眸に、心の奥底にしまい込んだものを見透かされそうな居たたまれない思いだった。
私は……私はっ、迷ってはいけないんだっ!
カッと沖田の目が光る。
刀を振り上げた、だがそれは何かに引っかかり身動きが取れなくなってしまう。
「なっ……しまったっ!」
「胴が、がら空きだぞ」
ヤられる。 と、思ったが芹沢は動かなかった。
否、動けなかったのだ。
何故なら、目の前に――――
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