駆け抜けた少女【完】

「芹沢さんは、本当に壬生浪士組のことを考えてた……ただ、それが空回りして…上手くいかなくて……ヤケになった時…」

「もういい……。 全ては、俺の弱さだ」


芹沢は涙を流した矢央の頭を、ゴツゴツとした手で一撫でする。

その思わぬ行動に驚いたのは、土方達だろう。


矢央の前では、こんなにも穏やかな表情を見せるのかと。


「俺は、俺自身に負けた。 ただそれだけだ、お前のせいではない」

「違うっ! 芹沢さんの力じゃどうにもならなっ……私にもどうにもできっ…」


この二人の会話は、土方達には理解不能だった。


一体なんだってんだ。 まさか、矢央が全てを話し……否、こいつは計画すら知らねぇはずだ。


「……さて、ガキはいい加減寝る時間じゃねぇのか。 間島……お前は前川に戻り、なっ!!」


「芹沢さんっっ!」


頭から温もりが遠のき、芹沢は刀を持ち背後に立っていた原田目掛け突進する。


油断しきっていた原田は、構えが遅れる。




―――――ザシュッッッッ!


「ぐっ……ア゙ァ……」

「原田さんっ!」

「原田っ!?」


暗闇の上、矢央と芹沢で原田の様子が見えない土方、沖田の心臓は鋼を打つ。


原田がヤられたと思った。


しかし、床に倒れたのは原田ではなく芹沢だった。



「……矢央…お前…ヤりやがった」

「矢央君っ、どうして君がっ!?」



芹沢が原田に襲いかかった時、ピカッと稲妻が落ちた。

矢央が床に転がっていた小刀を、芹沢の胸に突き刺したのはその一瞬だった。


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