駆け抜けた少女【完】
永倉の指が矢央の前髪にチョンと触れた。
「いつか、選ぶ日が来るかもしんねぇ。 矢央を信じるか、あいつを信じるの…か」
"あいつ"の言葉に、沖田の胸はギュッと締め付けられた。
そんな沖田には気づかないフリをして永倉は続けた。
「今までは半信半疑だったよ。 矢央が何かしらで、あいつと関わりがあるだろうとは思ったが、まさか本当にあいつとまた出くわすとはな」
「永倉さんも、会ったのですか?」
「まぁな。 だが、未だに信じらんねぇよ。 あいつが、この世にいる……こいつの中にいるなんてなぁ」
静かに眠る少女。
永倉は思った。
こいつは爆弾を抱えている、と。
「山崎さんが仰っていたのも本当だったようですね」
「ああ。 で、迷ってるようだが……いざという時にどちらを選ぶか……決めらんねぇって面だな?」
永倉の眼がスーッと細くなり、真っ直ぐ俯く沖田を見据えた。
迷っている。
迷わないわけがないだろう。
今の沖田には、どちらを選ぶなんてことはできない。
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