駆け抜けた少女【完】
タラリと顎を伝う水滴。
頭から水を被って濡れた髪が陽に照らされキラッと輝く。
「笑いましたよね?」
ドスのきいた低い声が、この俯いた可憐な少女が発しているとは信じ難いが、それは紛れもない事実。
ゆっくりと顔を上げ背後にいる男達を睨む矢央に対して、沖田、永倉、原田、藤堂の四人はブンブンと左右に頭を振る。
「人が気にしてるのに……」
プルプルと肩を震わせ怒りを露わにする。
「笑うなんて最低だぁぁぁっ!」
その声に驚いて、木々にとまっていた小鳥達が一斉に羽ばたいた。
「今の声は、間島君だな?」
「朝っぱらからうるせぇ…」
土方の逆鱗に触れているとは、まだ知らない矢央だった。