駆け抜けた少女【完】
「あっれーん? そこに見える若者達は、藤堂君に間島君じゃあぁぁないかぁぁ?」
夕日に照らされた二つの影は、急な声かけにビクンッと肩を跳ねさせた。
「……さ〜の! せっかくの良い雰囲気を壊すんじゃねぇや」
「あん? おお…おお! そうかそうか! そりゃ悪かったなぁ、ガハハハッ!!」
呆れて溜め息を吐く藤堂と、あ然とする矢央の前に現れたのは原田と永倉だった。
隊服も着ておらず隊士も引き連れていないから、巡察や任務の類ではないのだろう。
そして二人が近付いて来て知った、二人が今まで何処にいたのかを。
「……ウッ! 左之さん、くっさいよっ!」
「うおっ? そうか?」
原田から臭う酒の香りは強烈で、これは相当飲んできたなと分かった。
「……な、永倉さんも飲んできたんですか?」
「ん? ああ、まぁな……」
「…? 永倉さん?」
ほんのり頬を赤く染めながら、ジッと矢央を見つめた永倉はニヤリと笑い、直ぐ様言葉を放つ。
「矢央も罪におけねぇなぁ」
クツクツと含み笑いで、ついでに腹まで抱える永倉。
それを見て、言葉の意味を理解しない二人はキョトンとするばかりだ。
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