駆け抜けた少女【完】
山南に着替えを頼んだのも気まずさがあってのこと、そうと知れば矢央も怒りは無くなった。
非を認めている相手を執念深く恨むほど、矢央の性根は腐っていない。
にこっと笑みを漏らし、山南にもらった着替えをチョンッと持ち上げ「ありがとうございます」と心からの礼を伝えた。
「さて沖田君も間島君も早く支度をすませ食事をとりなさい。 女中の方々が片付かないとぼやいていたよ」
「それはそれは、急がないと申し訳ないですね。というわけで、着替えをすませて下さい。 私は、外で待ってますので」
膝に手を置き立ち上がった沖田は、そのまま山南と会話を交わしながら部屋を出る。
それと交代して急ぎ部屋に入った矢央を確認すると背中越しにピシャッと障子を閉めた。