駆け抜けた少女【完】
「山崎」
「はい」
土方が一声かけると、原田が倒した襖の奥から姿を現したのは観察方の山崎だった。
言われる事は分かっているようで、土方と目で会話するように見つめ合った後
「既に間島の捜索にあたっております」
「そうか。 見つけ次第報告頼む」
「はっ」
忍らしく闇に姿を眩ました山崎。
一旦瞼を閉じ何か考えていた土方は、浅く息を吐いた。
「いいか、矢央の事は山崎達観察方に任せる。 俺達には俺達の仕事がある、気を抜くな」
さすが鬼の副長。 少女一人がいなくなったくらいでは動じないと姿勢を見せた。
藤堂だけが腑に落ちない想いを抱えながらも、仕方なしに頷いている。
しかし会議を終えた後の土方の表情は硬いままだった。
その真意が明かされるのは、まだ少し先の話である―――。
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