駆け抜けた少女【完】
――今は、帰りたくない。 そう思った。
今新選組の下へ帰れば、自分は更なる窮地に立たされるような気がした。
帰らなければ帰らないで、それも危ないような気もしたが、本心では暫く離れていたいというのが本音だ。
「矢央」
真剣な声で呼び掛けられ、矢央はまた其方を向く。
真っ直ぐと澄んだ双眸の中に自分が映っていた。
「なんですか?」
「傷は痛むか?」
痛むかと問われれば、まだ痛いと頷いた。
原田の突きは命取りだなと、身を持って実感する。
この傷は、本来なら一人を死に追いやっていたはずなのだが、それを矢央が自身に移したことで死には至らなかった。
がしかし、何か変だ。
今までの傷は致命傷ではなかったにしても、三日も経てば治っていたのに、この傷は浅くはなっているが、まだ治りそうもなかった。
――どうしてだろう?
治りが遅くなってる……?
負った傷が深かったから?
矢央は、顔をしかめた。
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