駆け抜けた少女【完】
第六話*似た存在
*
食事を終えた矢央は、与えてもらった部屋の縁側でボンヤリと庭を眺めていた。
本日は晴天でぽかぽかしていて日向ぽっこ日和だ。
だが別にうとうとしたい気分ではないと、「ハァ」と吐かれた小さな吐息で知る。
どうして自分は時代を遡ってしまっているのか理由がわからない。
ただ覚えているのは、掃除をしていたら桜の花びらが集まっていて気になって掘りあさってみたら赤い石を見つけたことくらい。
あの石は何処にやったのかと思い巡らせて、庭先に干してある自分が着ていた袴を見つめた。
確か袴の中に。
そう思い立ち下駄を履き庭先に降り立つと、慌てて物干し場へ行く。
「お願い、あってよ……」
袴を探ると、その赤石は無い。
唯一の手掛かりかもしれない赤い石が無いことに落胆していた矢央に、廊下を歩いていた足音がピタリと止まった。