駆け抜けた少女【完】
龍馬と桂は、八月十八日の政変以前にある人物を通して京で出会っていた。
互いの思想を語り合うまでに仲は良く、信頼もあった。
しかし龍馬が矢央の事で語ったのは、本当に桂が言葉にした一言だけだ。
矢央の慌てぶりを見た桂は、何か自分に知られてはならないことがあるな鋭く勘を働かせた。
龍馬も語らなかった矢央の秘密はただ一つ。
それは"未来から来た"ということだ。
変わり種とは聞いてあるが、それ以上は聞いても答えてくれなかった。
『女子の秘密をバラすのは良くないぜよ。 ただ、わしらにも奴らにとってもあの娘は貴重な存在だということぜよ』
京を追われた長州の者にとって、幕府の犬と言われる彼等新選組は厄介な存在。
田舎侍の集まりが手軽を得るために必死に働く姿は滑稽に見えた。
しかし、彼等は腕がたった。
それが更に厄介なのだ。
腕がたつ集団が、我が者顔で京を闊歩し、敵に容赦なく牙を向き襲いかかってくるのだから。
桂は運良く逃げているが、何人もの同士達が捕らえられたことに苦虫を噛む思いだ。
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